希望の5年パスポート?

冒頭の話に戻るのだが、タイへ行こうと決めた時、旅のお伴に35歳の友人を誘った。ファビュラスなオバ友、あいちゃんだ。突然の誘いにも関わらず、彼女は即答でOKしてくれた。正直、期待通りであり、予想通りの返答だった。あいちゃん、大好き。

さっそく、私たちはタイで訪れたい場所をSNSで探しながら、コロナ禍で期限が切れたパスポートの再申請についても調べていた。すると、あいちゃんから「パスポートは5年で作る?10年で作る?」と尋ねられた。パスポートは期限が5年のものと10年のもので、発行費用が5千円しか変わらない。なのに、なぜ5年で作成するという選択肢があるのだろうか。もしかして、まだ今後も大幅な整形をするつもりだと思われているのだろうか。私は「え?10年で作るでしょ」と当然のごとく答えた。

「10年の内に名字変わらない?」彼女の質問の意図を知り、私はとてもハッとした。たしかに10年もあれば、名字が変わらないとは言い切れない。とはいえ、「変わっていて欲しい」と切に願うわけでもない。パスポートを作る過程で、まさか結婚について考えさせられるとは思ってもみなかった。

「なきにしもあらずですね」動揺して敬語で答えてしまった。「あいちゃんはどうする?」「どうしようね。ちょうど10年前、私は今の妹尾と同い年だったけど、10年でパスポート作って名字変わらなかったからなあ」「10年でパスポート作ると結婚出来ないジンクスとかある?」「それは聞いたことないけど、私は5年で作ろうかな」「希望の5年パスポートですね?」「そうそうそう」あいちゃんは結婚に希望を込めて、パスポートを5年で発行することにした。

一方、私はこの日のあいちゃんとの会話で結論を出せないまま、昨日、パスポートセンターへ行ってきた。ギリギリまで悩んだが、期限10年と書かれた用紙を貰い、必要事項を記入した。書き進めている途中で「2年後の誕生日に入籍しよう」と言ってくれた男の顔がしつこく浮かんだが、ペンが止まることはなかった。

誰かとの人生に小休憩を

14歳の頃から、いろんな男とくっついては離れてを繰り返してきた。そのせいで、"誰かとの人生"についてばかり考えてしまい、自分の人生そのものについては全く考えてこなかった。自分の機嫌の取り方よりも、男の機嫌の取り方の方がよく知っている。これまでの私にとって、男といることは"自分と向き合わないための逃げ道"だったのかもしれない。それに救われた夜もあるし、それで学んだこともあるが、今の私は誰かとの人生ではなく、自分の人生を豊かにする努力を楽しみたいのだ。

妹尾ユウカ

独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、
『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。

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