あの子がすぐに誰かを好きになる理由

先週、女友達がまた自傷行為と呼べる深い眠りについたと知って、Uber Eatsをキャンセルした。食が通らないほどに悲しい気持ちになったからではなく、私がどんなに大切に思ったところで救われる気のない人間を救うことはできないという現実に落胆したのだ。正直なところ、彼女が死んだところで私は何も困りはしない。むしろ、しょうもない男とのしょうもない話に耳を貸す手間はなくなるし、「本当にもう薬物はやめる」「本当にちゃんとする」といった詐欺にもこれ以上遭わずに済む。彼女の「本当に〜」にはもうみんなが本当にうんざりしている。

彼女は私と同い年の24歳。生まれも育ちも大阪だが、彼女の口から方言を聞いたことはほとんどなく、カラオケで『大阪LOVER』が流れた時も「地元愛皆無卍」と言わんばかりの知らん顔を貫いている。周囲の知り得る彼女といえば、ご丁寧にスカーフの巻かれたLady Diorとプルミエールがよくお似合いの立派な港区女子である。容姿や声色の女の子らしさも込み込みで、第三者には恵まれているようにしか見えない彼女だが、2人きりで話していると自信のなさが垣間見える。常に「顔がいいだけ」としか形容し難い男たちと人生に波風を立たせては、天高く舞ったり深く沈んだりとなんとも忙しい彼女だが、きっと自信がないが故にすぐに誰かを好きになっているのだろう。好きになった人から愛されることで、自分のことも好きになろうとしているのだろう。

「生きたい」よりはマシ

これからもどうかそんな調子で構わないから、あなたには生きていて欲しい。「死にたい」と思う状況は絶望的に思えるかもしれないが、「生きたい」と切に願う状況に比べればよっぽど恵まれた話である。あなたも私も人はみんなそれぞれに様々な事情をかかえて、平然とした顔で生きている。もしも、また「死にたい」とあなたが思った時にはそんなことを思い出して欲しい。そして、出来ればあの日のUberのキャンセル代だけは全額あなたに払って欲しい。何はともあれ、こんな話をあなたが生きようと思える理由の1つになってくれたら嬉しい。

妹尾ユウカ

独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、
『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。

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