深夜は港区おじさんの恋愛相談を聞く。「この子が俺を好きで、でも俺はこっちの子が好きで、最近はこんな子からよく誘われる」とハイブラの豚さんが若い女たちのインスタのページを飛びまわる。私が「恋愛育成ゲームのやりすぎで現実世界との区別が付かなくなったのか?」と尋ると、店中に響き渡る大きな声で笑っていた。彼の妄言を聞いていた他の客たちの方が、彼のことを笑いたかったに違いない。ちなみに、この日に着ていた蛍光色のヴィトンのダウンは「こんなの俺が買わなきゃ誰が買う」という義務感で購入したらしい。バカみたい。
一時、10歳年上の友人から「乳首が驚くほどピンクになるから!」とタイ製の怪しいクリームを薦められていた。結局、その商品は薬事法に引っかかり、現在では販売中止となってしまったが、その効果はどれほどかというと、綺麗なピンクになり過ぎて、バーで色んな人に自慢気に見せてしまうほどだったそう。ハッキリ言って、飲み屋で時計自慢をする半グレの方がよっぽどマシである。

もっとずっと気楽に

さて、あと何十年もすれば、港区おじさんは青山霊園で供養され、女友達は誰かの奥さんやママの顔を持ち、私はサーティワンが歯に染みるようになっているかもしれない。何を取っても「かもしれない」ことばかりだが、それに胸を躍らせていたい。今、確かに分かることなんて、私もみんなも少しずつ着実にこんな雑多な日々の名シーンを忘れていくということだけだから。

妹尾ユウカ

独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、
『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。

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