犬許さんぞ事件

子供の頃から犬を飼っていた愛犬家の私は、ここ数ヶ月ほどアーティストの男から、地方公演がある度にその飼い犬を預っているのだが、この犬のせいで、今では道ゆく犬にすら不信感を抱いている。先日、彼が犬を預けに我が家へやって来た時のこと。玄関で犬を放ち、私がキッチンで調理をしていたところ、リビングから「妹尾ユウカ、ごめん...!」という男の声が聞こえてきた。

彼が私のことをフルネームで呼んでいる点はさておき、キッチンを離れてリビングへ向かうと犬がゴミ箱から漁った使用済みの生理用ナプキンを咥えて走っていた。道徳心とは裏腹に引っ叩きたいと心底思った。そんな犬を見ながら、飼い主は小声で「あれ生理のナプキン...」とご丁寧に教えてくれたのだが、そんなもん見りゃ分かる。分かっていないのはお前んちの犬だけである。直ちに黙れ二足歩行、直ちに離せ四足歩行。

しかし、そんな愉快犯の犯行後も、彼との関係は特に変わることもなく、私は定期的に愚かな二足歩行からバカ犬を愛護する活動を懲りずに続けている。なぜなら、飼い主の顔が玉森裕太に似ているから。ただそれだけである。「預かるに十分な理由だね」と女友達も言ってくれた。

年齢は精神の筋力

最後になるが、子供が居ようが歳を取ろうが、需要と「そこに在りたい」という自分の意志がある限り、女は恋愛市場を駆け回ることが出来る。ナプキンを咥えた犬を追いかけて部屋中を駆け回ることも出来る。年齢や肩書きを理由にして、楽しい世界から自分を締め出そうとしてしまうのは、他の誰でもなく自分自身なのだ。年齢は精神の筋力だから、歳を重ねるほど重たく感じるかもしれないが、決して閉ざされているわけではない。「幽霊と老化は認識したら負け」私が愛犬家になるきっかけをくれたおばあちゃんもそんなことを言っていました。

妹尾ユウカ

独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、
『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。

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